【獄中での文章】3/29の死刑執行に対する小川元法務大臣への東京拘置所収容者としての抗議申し入れ書

そしてこれもやりました、本当に死刑をなくしたい!!

法務大臣への抗議文」園良太


「東京拘置所の収容者として、法務大臣への死刑執行の抗議書を送り、回答を得ます!」

こんにちは、当該の園良太です。3月29日の勾留理由開示公判にお集まりいただいて本当にありがとうございました!弁護士や親の陳述も今回の問題がよく分かるもので本当に良かったです。ぼくも50日ぶりに仲間に会えて心から嬉しかったし、50日分の怒りと思考をぶつけられたので満足です。まともな勾留理由を明かさない裁判所と一切喋らない検察はひどいものでしたが、負けずにがんばりましょう!
さて、公判を終え、東京拘置所に戻った瞬間に「今朝1年8カ月ぶりに3人の死刑を執行、その内1人は東京拘置所の収容者」というラジオニュースが部屋で流れ、衝撃を受けました。当然出歩けないので実感はないのですが自分のいる場所から連れて行かれたかと思うと余計怒りを感じます。何かしなきゃと思い、拘置所の収容者は所内での事などに不服がある時は法務大臣に書面申し入れして回答が得られるので、死刑ニュースを聞かされた収容者として書いて郵送しました!死刑には色んな意見があるのが日本の現状ですが、ぼくは以下の理由から絶対に許されないと思います。申し入れ書を公開し、こういう抗議のやり方もできたという事で、回答も来たら公開するので、ぜひお読み下さると嬉しいです。権力の横暴の極みである死刑をなくしましょう!


小川敏夫法務大臣殿


2012年3月29日に3人の死刑を強行し、東京拘置所からも1人を出した事に対する、収容者としての抗議申し入れ書

                                              2012年3月30日

                                   東京拘置所C棟11階57室 園良太


2012年3月29日朝、1年8カ月ぶりに法務大臣は3人の死刑を強行し、しかもその内1人は私のいる東京拘置所から連行し、死刑執行を同日午後7時の館内NHKラジオニュースから全収容者に伝えました。私はこれら全てに満身の怒りで抗議申し入れをします。

死刑は国家権力が私たち市民の命をうばう「殺人」の制度であり、許されず、世界各国が廃止し続けているものです。死刑増加で「凶悪犯罪」が減るという統計など一切なく、そもそもそんな統計など出しようもなければ、関連もありませんし、「凶悪化」など存在しない事は犯罪白書が示す殺人件数の低下でも証明されています。それでも死刑を強行するのは「市民を生かすも殺すも国家の力である」と私達へ見せつけることだけが

目的です。

あなたは記者会見で「国民の85%が支持しているから、法務大臣の職責として実行した」と述べました。全て誤りです。目的は年度内にかけこみで権力の 示=死刑の実績作りをするためでしょう。そして「85%の世論」とはこのような実態を隠す法務省とそれを伝えないどころか死刑をあおるメディアにより作られた虚像であり、裁判の拙速化と重罰化を進めるために「被害者感情」と裁判員制度を利用した誘導です。その代表例にされてしまった山口県光市事件の被害者遺族は死刑判決後に「死刑判決に勝者はなく、犯罪が起こった時点で皆、敗者。少年にもう一度チャンスを与えてあげることが社会正義なのか、命をもって罪の償いをさせることが正しいのか。きっと、その答えはないんだと思う」と発言したと報道され、新聞はのきなみ「この発言を重く受け止めたい」と書きました。であるなら「死者という敗者」をさらに重ねる死刑はやめるべきであり、「死刑に意味はないが、秩序維持のために続けていく、社会は“これは殺人である”という加害性を引き受ける必要はない」という恐るべき倒錯・ごまかし・生へのニヒリズムです。「被害者」の感情も「加害者」の内面も時間と共に変わりうるという人間の可能性を全くうばう事で許されません。「3.11」後に必要なのは生への希望です。

そして死刑執行は法務大臣の職責でも何でもなく、むしろ法務官僚が圧力をかけて回してくる死刑の執行起案書にサインをしない事で死刑を止めるのが大臣の職責です。だから過去1年8カ月の4人の法相は死刑をやらない事ができたのであり、それが当然です。日本弁護士連合会も2月に死刑停止アピールを出したばかりです。

さらに、死刑判決確定者やそれを争われている被告が数多くいるこの東京拘置所から連れて行かれた人が死刑執行され、獄内の全ての部屋に見せしめのようにニュースが伝えられ、全ての人を威縮・恐怖させた事も許せません。私の「威力業務妨害事件」自体も公安検察による完全な政治的でっち上げであり、そうして不当起訴や判決を受けている人も数多くいるのです。過去には無実の可能性が高い人も死刑執行されました。

以上の理由から、私は小川法相に以下申し入れし、文書にて回答を求めます。申し入れと回答はインターネットを通して公開します。

1.3月29日の不当極まる死刑執行の責任を取って法務大臣を辞任する事。

2.今後死刑を一切行わない事。死刑判決を撤回させる事。

3.今後死刑判決を一切出させないように、法務省全体と裁判所に最大限働きかける事。

4.東京拘置所から死刑執行される人を出させず、収容者を威怖させない事。

以上