『ヤマトで「基地反対」の声を上げる理由と壁』

反天皇制運動連絡会」の会報「モンスター」2010年9号に原稿を書きました。転載します。

ヤマトで「基地反対」の声を上げる理由と壁
 沖縄を踏みにじるな!緊急アクション実行委員会 園良太

私たちの「新宿ど真ん中デモ」は、毎年秋に開催される「反戦と抵抗の祭<フェスタ>」の2009年度実行委員会の有志から始まっている。そこで去年アフガン派兵や北朝鮮バッシングにどう反対していくかを話し合っていた時、「日本(人)は攻める立場になっていることに実感を持ちにくい事が、先のアジアへの侵略戦争の時代から変わっていない。それが大きな壁になっている」と話題になった。イラク反戦運動アメリカを批判するうちは大いに盛りあがったが、日本のイラクへの自衛隊派兵や有事法制を問題にしても、とたんに参加者が減っていったことが最近の代表例だろう。
 これは「ヤマト」の多くの人々が沖縄に対して無関心になる理由と一緒だ。自分たちが基地を押し付けていることと、それがひどいことであることへの実感が乏しいからだ。まず大前提として、自分たちがそれに加担したくないから「基地反対」の声を上げている。その原因は長い歴史があると思うが、最近の経緯に絞って考えたい。
 私たちの実行委員会が沖縄の米軍基地に反対しているのは、イラク・アフガン戦争への出撃拠点になっている「加害性」も大きい。私たちは明確に侵略戦争を行ってしまっている。だが2002年に北朝鮮バッシングが激化してから、イラク反戦憲法9条を担保に国内のみの平和を享受してきた生活保守主義の限界に直面する。数万人が集まった直後にも関わらず「北朝鮮に攻められたらどうする?」と危機感が煽られ有事法制が成立し、その後も政府は日米軍事再編を進めていった。また「アメリカに守ってもらうためには仕方ない」としてアメリカが求めるイラク派兵が行われた。その結果2004年に「イラク人質事件」が起きると、彼らの「自己責任」だと切り離す大バッシングが起きた。その後も日本は泥沼化するイラクとアフガンへ派兵を続けたが、メディアは取り上げなくなり、反戦運動も参加者が減っていった。
 これは沖縄の自己決定権の主張に対して「国防のために我慢しろ」と恫喝する保守政治家やネット右翼、無関心なまま忘却していくマスメディアや多くの人々の姿と一緒ではないか。海外派兵には「対テロのため」と思考停止し、自らの責任と切り離して無関心になる。近隣の北朝鮮や中国には危機意識をむき出しにして、国内の軍拡を達成する。ともに前者はソマリア派兵まで、後者は「哨戒艦」沈没事件や中国との領土問題の悪用まで今も続いている。それは政府が主導しながら人々も容認する共犯関係となっていた。そして自分たちとは異なる環境で苦しむ人々への想像力や、自らが彼らを抑圧していることへの責任意識が失われていったのである。  
もう一点。現代の戦争は(例えばベトナム戦争で死者の多さが批判された後の・湾岸戦争以降のアメリカは)、独立運動弾圧や資源確保のために「大国」が「小国」や独立運動を一方的に空爆する形になってきている。戦争は空爆が中心になり、精密誘導兵器、無人戦闘機まであるほど通常兵器が高性能化した。イラクでもアフガンでも民衆が大量虐殺されているが、攻撃側の死者を減少させるための卑劣な工夫が進んだため、それが分かりにくくされている。大国は自国の死者数に敏感だし、開戦のためには世論を説得することに腐心せざるを得なくなっている。だが政治家がマスメディアで「テロとの戦いは長引くものだ」と煽り、マスメディアも戦場の実態を報じないことで、「見えない脅威」だけが膨張し、戦争が正当化される。こうした戦争の形態変化が第2の原因ではないだろうか。
 これを変えるために、私たちは前回8月のデモ先頭で沖縄海兵隊の映像を流した。トラックの荷台に映写機を置いてスクリーンを張り、海兵隊が「日本の防衛」など関係なくジャングルでの上陸訓練をしていることを伝えようとした。またアルタ前ライブも大規模に展開して音でメッセージを伝えようとした。新宿繁華街で楽しむ人々と沖縄で基地被害を受ける人々のリアリティはあまりにも違うが、そこに切り込んでいかなければヤマトの加害性を変える事はできないと思うからだ。そして次回のデモでは自衛隊の沖縄・南西諸島への進出の問題も正面から取り上げ、詳細に語れるゲストトークを予定している。ぜひご参加ください。
「米軍だけじゃない、自衛隊も沖縄を踏みにじるな! 新宿ど真ん中デモ」
10月10日(日)13時半:トーク&アピール 15時:デモ出発 ともに新宿東口アルタ前広場にて。詳細はhttp://d.hatena.ne.jp/hansentoteikounofesta09/