★フリートーク:「世界に向かってハローと手を振るために」part1★

自分の近況や現代社会/世界への考えを、架空の友達ナイン君との対話のかたちでまとめてみました。この方が忙しくても書きやすかったので。思いはたくさんあるので連載にしますね!

★フリートーク:「世界に向かってハローなんつって手を振るために」part1★

ナイン:久しぶり、元気? 相変わらず運動ばかりやっているの?

園:そうだね、朝から夜まで週5でバイトしながら、「沖縄を踏みにじるな!緊急アクション実行委員会」の「新宿ど真ん中デモ」と、「麻生邸リアリティツアー事件国賠訴訟」の2つをメインに活動してるよ。正直やることも多いし忙しい。常に何かやったり考えたりして自分を追い込むクセに、(週5で働いてると)拍車がかかっていく感じだよね。良くないなぁと思いつつ、それでも数年前より気の抜きどころは分かってきたよ。朝起きるのだけは相変わらず苦手だけど…。

ナイン:誰でもそうだけど、昼も夜もフルに仕事や運動をせざるをえなくなるから大変だよな。

園:運動は自発的でカネが絡むものではないからね、色々移動してると電車賃も高くなるし、外食にもなるし。最近おにぎり作って持って行くようにしたよ。あと自分は洋服、特に安くてオリジナリティのある古着屋をまわるのが好きだったんだけど、あまりに金がなくてそれが全然できないのは辛かった。音楽はyoutubeや友達の野外ライブでも何とかなるようになった分、他の事にはほとんど消費しないから余計にね。この夏はメチャクチャ暑かったじゃん? 同じような服を着る事が多くなって、それが汗だくになるのは気分的に悲しかったよ。だから給料入ったらキツイのに服とバッグ買っちゃったよ。あとは髪を染めたいんだけどねー。

ナイン:それにしても呼び掛けてるのはハードなテーマの運動ばかりだし、直接行動だし、ネットだけで見てると危なっかしいというか、引く人も多いんじゃないの?

園:確かにね。直接行動って、やって楽しかったり悔しかったりする経験がまた次の行動を生み出すから、それに関わる人とそうでない人の間で乖離が生まれやすいと思う。日本社会は特に1970年代から直接行動が減って久しいし、俺自身数年前の自分ならビビっていた行動や、警察や右翼にきちんと抗議する事も、やっていくごとに慣れていって、「次も必要だよね」と思うようになったし。
だから、できれば沖縄の「新宿ど真ん中デモ」には本当にたくさんの人たちが来てほしいと思ってるし、新宿のあの場(もちろんそれ以外の場でも)を、この社会を覆う閉塞感をぶち壊すようなマジの解放区にしていきたいと思ってるよ。そしてその参加の壁になるような現状を変えたいと思う。でもその前に、何が壁になっているのか、それにつながる今の貧困問題や反戦問題がどうなっているのかを色々話させてよ。


1:「反資本主義」について

ナイン:いいよ、久しぶりだし。でもそれは全然簡単だと思えないな。そもそも今みたくみんなが自分の生活に精一杯だと他人事の運動にまで手が回らないし、たとえ自分の生活と直結した労働運動でも、声を上げる人は少ない。だから「派遣村」の頃までは反貧困運動もガンガンメディアに出ていたけど、今はあまり見なくなっちゃった。ひとが運動を知り触れる機会が減ってるんじゃないの?

園:んなことはないよ、僕は最近ほとんど関われていないけど、フリーター労組の労働相談は今も毎日来ているし、みんなの労働環境はマジ悪化してるでしょう?

ナイン:洒落にならないよ。探しても探してもシゴト見つからないし、バイトにも人が殺到するし、家賃が払えなくなる友達が当たり前のようにいるし、精神的にもマジで不安定になるし。だから何で盛り上がらないのか余計に不思議に思う。民主党政権になって大きく良くなったとも思えない。

園:多分、大きなテーマが見えないんだと思う。フリーター労組も含めて、労働運動や反貧困運動がどんどん大きくなっていたころは、「貧困問題を世の中に押し上げる」ということで大同団結していた感じだった。ただその「押し上げ」が派遣村でピークを迎えたよね、あれほどのメディアが集まって、霞が関厚生労働省という「敵」のおひざ元で、「この現実を見ろ!」という主張をしたのだから。
その後に政権交代が起きたわけだけど、正直運動の勢いをそれに持って行かれた面は否めないと思う。自民党があまりにひどすぎたから、民主党への変化がぼくらの「変革」でもあるかのように思われた。そして多少の成果は残したものの、今管や財界がかなり新自由主義に戻ろうとしている所を見ていると、運動が大きなテーマを出し続けることが必要だったと本当に感じるよ。

ナイン:昨日の東京新聞にさ、「9月14日に代々木公園で『就活の疑問フェスティバル』開催」って記事が出ていたんだよ。あまりに学生の就活が厳しいからその疑問を出し合うイベントを学生主体でやろうってもので、記事も同情的だったんだよね。でもさ、企業が一時的に新卒学生を採るようにすれば済む話じゃなくて(それすら怪しいけど)、他の全ての貧困問題とつながっている、まさに資本主義の暴力の問題だと思うんだよ。だから採用増や採用減が簡単に繰り返されるし、正社員というパイが少ない現状はもう変わらない。新しい職業支援や就職セミナーが生まれる程度の成果しかもたらさないかもしれない。だから、本当は学生自身が主役になって派手に反抗が起きたら本当に嬉しいし、そうなるべきだよ、「こんな社会を、資本主義の暴力を変えろ!」ってね。

園:そこに運動の広まりの薄さを感じるんだ。運動が作り出すのは、声の上げ方や目指す世界のイメージでしょう? それが世間から見えなくなっているから、「就職氷河期」から17年経っても、いまだに「企業は私たちの現状を何とかしてほしい」というメッセージや、「お願いする」という形の外に出ない。それこそ発想力の問題だし、小倉さんが言う「希望が抑圧されている」という状態なんだろう。http://alt-movements.org/no_more_capitalism/modules/no_more_cap_blog/details.php?bid=83

ナイン:「派遣村」の大報道をテレビで観た時に感じたのはさ、主張ももちろんだけどそれ以前に「日比谷公園を占拠ってすごいな!」ってワクワクした気持ちだったんだよね。

園:そう。俺は毎日現場にいたけど、あの「占拠」こそ派遣村最大の意義だったと今でも思うよ。政権への要求だけでなく、運動が自治の空間をあれだけ大規模に作り上げた意義を、もっと伝えて行くべきだったと思うんだ。そうすれば運動のイメージや希望はさらに持続したよ。だから自分も当時そう書いた。毎日規模が広がってどんどん状況が動くダイナミズムには興奮したよ。もちろん現場の中心の人たちは大変だけど、広がって持続すれば手伝う人たちも増えて行く。労働/貧困運動に最近あまり関われていないからあまり言えないけど、やっぱ色々現状を変えたいと思うよ。

ナイン:反貧困や新しいフリーター運動全体が大きく盛り上がっていた時、「自己責任論に反論する」という大きなモチベーションがあったように見えた。その前の小泉政権が本当にひどい時代だったからさ。

園:自己責任論を声高に言える時代じゃなくなった事は成果だと思う。ただあれは今も相当深く根を張っているよね。高齢者の「不在」問題では、個別の事情を抜きにして家族が「サギ」と叩かれるし、乳幼児を死なせたら母親だけが一方的に人格批判をされる。フリーターや派遣社員が表立って批判されなくなっただけかもしれないんだよ。だからこそ多様な運動のやり方があることを継続的に伝えて行かなきゃいけないし、それが目指したいのは、グローバル資本主義そのものが持つ問題性を明らかにしていくこと、そうして初めて、一過性の批判や個別の解決策だけでは問題は終わらない事がわかり、関心も持続していくと思うから。

ナイン:自分は反戦、反基地、反差別のテーマを重く感じる方なんだけど、普段から自分の不満や被害ですら声を上げる習慣がなければ、さらにその外の問題に踏み出す事が難しいと思うんだよね。

園:本当はそれは順番じゃなくて、人は自分がやるべきだと思った問題は何でもやるから。ただ確かにそういう面もあるし、それがデモを始めとした街頭行動への冷ややかな視線や諦めの気持ちのベースだよね。 多分一番持たれにくいのは「連帯のイメージ」なんだと思う。「連帯した方が力になる」「その方が楽しい」と言っても共有されない時代になってもう何十年も経っている。

ナイン:その分一人ひとりがバラバラにされて、職場で競わされたりただじっと耐えたりして、その疲れは消費で癒す、と。

園:それが日常になっていくのも、日本は「労働が倫理」になりすぎているし、仕事が生活の中に浸食しすぎているから。自己成長はいつでも仕事の中で、クリエイティビティもいつも仕事の中で。だから高度経済成長やサラリーマン文化に反発して生まれたはずのサブカルチャーカウンターカルチャーの担い手たちが、日本では簡単にビジネス誌や新聞の求人情報欄に出てきて、労働倫理を語ってしまう。コンビニや駅の売店には長時間労働を前提にした食べ物や飲み物ばかりで、俺も今日仕事中に眠気を覚ますためにミンティアを食べすぎたら見事にお腹を壊したよ!

ナイン:それが日常世界を覆っているから、逃げ場がないんだよな。

園:そう、だからこういう時に欧米のようにオルタナティブ・メディアが強ければいいなとすごく思うし、こういうトークで情報発信をしたいと思った理由だよ。ただその際に気をつけたいのは、人の内面から自発性を縛っていく労働や情報社会の仕組みがどんどん新しく出てきているのでは?と思うことだよね。事態を知って考えれば、より良い方向に行けるはずだよ。