今社会に思うこと(大づかみに)

今日は寒い。少しずつ動き出す。これから麹町と高田馬場へ。僕は、目の前にいる人と今まで以上に大事に接していかなくちゃ・・・。

★日本の「政権交代」「二大政党制」なんてこんなもんだ。もちろん「自民もダメ、民主もダメ、だからみんなの党」(笑)といったネオリベ復活な意味じゃない。明確な思想的な違い・対立点が無いから、「政治とカネ問題」で争うことしかできない。メディアもそこしかクローズアップできない。そのどうしようもなさのことだ。フリーター労組にいると、日々やってくる労働相談がどれだけ増え、どれだけ深刻化しているかがわかる。昨日もいくつもの電話が来て、団交に出て、友達の相談を受けてきた(前の用事が長引き遅刻してごめん!)。フリーター労組の労働案件は増え続けている。そうした現場に基づいて政策を組み立て、人々本位か/大企業優先かという対立点だけでも立てられるはずなのに(もちろんその外にも左派が存在するのがヨーロッパ)。
政権交代までのメディアは、派遣村に象徴されるように、運動が提起する課題へ今よりもう少し近づいていた。政権は形だけでも「格差是正」を言い、「反貧困ネット」などはそこへ向けて積極的に政策提言をしていた。けれど政権交代してしまえば日本はこうなる。どんなに僕らの状況が悪化しても、議会政治ははるかかなたで「劇場」を続けている。せめて子ども手当の成立など、格差と貧困で焦点となっていたことが実現されているかどうかのチェックを最優先に報じるよう努力すべきだ。だから新聞も週刊誌もテレビも誰も観なくなっているんだ。

資本主義そのものにどう反対し、どう変革していくかが焦点にされるべきなのだと思う。こういう時こそ運動の底力が問われるのだと思います。それはいつだって議会の外から始まる。まずは一つひとつのイベントで……。

ギリシャ全土で24時間ゼネストで 250万人が参加、政府は危機的状況に追い込まれる(2月23日財経新聞
 危機的状況に追い込まれているギリシャ全土で24日、政府が打ち出した給与凍結、増税など政府の緊縮策に国民が反発、官民の二大労組連合組織による24時間ストが行われた。両組織の組合員総数は人口の約25%の約275万人に及びギリシャ最大規模のゼネストとなり、社会機能は完全に麻痺状態に陥った。・・・ストに入ったのは民間の「ギリシャ労働総同盟」(組合員数約200万人)と「ギリシャ公務員連合」(同約75万人)。空港、鉄道、病院、学校、銀行などが一斉に休止、新聞やテレビなどのマスコミも参加している。また農民団体が道路封鎖を行い、物流などに大きな障害になっている。

★そうしているうちに今、労働相談を受けている僕ら自身が本当に仕事が見つからなくなっている。金がやばい。これはフリ労に限らず、「素人の乱」でも他でも少し前まで(若さもあって)勢いよく活動出来ていた人たちの共通現象だと思う。僕も何とかしなきゃいけない。活動する余裕もなくなっていく。だから余計に政治も社会全体も仕事を作り出していかなきゃいけないんだ。
昨日、「自由と生存の家」に「NO−VOX国際連帯フォーラム」http://www.labornetjp.org/labornet/EventItem/1267432405200staff01
のために来日したフランス・カナダ・韓国のアクティビストを案内した。スクウォッティング(空き物件を占拠して住むこと)の達人であるフランス人は、日本の住宅事情について矢継ぎ早に質問してきた。家賃の高さ、追い出しの厳しさにびっくりしながら時間切れになったが、僕が最後に日本の特徴として伝えたくなったのは「孤立の激しさ」だった。

こうして仕事が失われたり、いつクビになるか分からない状況の中、疲れ果てて家に帰っても東京(日本)は地域の人間関係が無さ過ぎる。これも適度なスモールタウンの中で人が集えるバーやクラブが存在するヨーロッパとは大きく違う。人は孤立すると活力を奪われるし、資本はそうして人を労働のみに従わせている。つくづく資本主義に覆われた都市だなと思う。街へ出ればすぐに警察に取り締まられるし、疲弊しきった僕らの他者不信を監視カメラが煽る。そしてひとが生きていくことを「身分証明書」なるもので果てしなく選別するようになっている。
http://street.chikadaigaku.net/demo/224-%e9%83%bd%e5%ba%81%e5%89%8d%e6%83%85%e5%a0%b1%e5%ae%a3%e4%bc%9d%e3%82%a2%e3%82%af%e3%82%b7%e3%83%a7%e3%83%b3-%ef%bc%86-313-%e8%a6%8f%e5%88%b6%e3%81%ab%e5%8f%8d%e5%af%be%e3%81%99%e3%82%8b/

ひっくり返さなければいけないと思う。警察と警備員とテクノロジーにより他者不信を煽りながら埋め合わせる無限のマッチポンプではなく、関係を積み重ねることで信頼をつくっていけるように。

こうした状況でインターネットやケータイだけが発達し、オープンでパフォーマティブであるほど評価されるその世界の中で、私たちは他者への信頼が置けないまま「開かれたコミュニケーション」を行う事が求められている。これは政治や社会構造が原因で貧困化しても、「自己責任でスキルアップせよ」と求め続けられてきた事と似ている。ツイッターで民主主義が変わるという議論に共感しきれないのは、そこにからだを伴った能動性が感じられないから。今の状況では、まるで私たちの頭に刺されたネット回線・電話回線だけが他者とつながったまま、無表情で労働⇔帰宅を繰り返すだけの絵が想像されるからだ(誰か書きませんか?)。
この不毛さはなんだろう。この閉塞感はなんだろう。これらは常に現実の人間関係や運動のひろがりとセットであるべきだと僕は思う。そこから使いこなせばいくらでも可能性は広がるはず。

★止まらない閉塞感は怨念となり、在日朝鮮人へのさらなる差別へ向かう。敵意を煽るネットや本はたくさんあるし、間接的な情報だからこそ妄想はどこまでも膨らんでいく。それは日常の他者不信と監視と取り締まりの延長でもある。そして民主党が高校無償化から朝鮮学校を外そうとしたことで、「在特会」はやっぱり特攻隊にすぎなかったことが明らかになった。
・NGOと市民の共同要請・私たちは朝鮮学校を「高校無償化」制度の対象とすることを求めます。http://alt-movements.org/no_more_capitalism/modules/no_more_cap_blog/
いつだってこの社会は差別を温存させてきた。在特会が道を切り開いてから、より悪質な主張がメインストリームで出てくる、それがこの法案だろう。金光翔さんが指摘するように、安部政権から鳩山政権までの連続性でこうした動きを捉えるべきなのだと思う。

また、ハイチの米軍再占領、そこへ協力していく自衛隊、という構図もひどくなっている。これから民主党はこのやり方でどんどん海外派兵を提案するはずだ。止めなきゃいけない。自衛隊内に日本国内の貧困層が増えており、彼らは日本がさらに豊かで居続けるための経済的な占領の手先になる。
・「media debugger」ハイチPKOはアフガン参加の前哨戦:http://mdebugger.blog88.fc2.com/blog-date-20100207.html
・本当に書けないことが書いてある「週刊金曜日http://mdebugger.blog88.fc2.com/blog-date-20100214.html(その後の伊勢崎賢治への批判も鋭い)
これに対する反戦運動を、どうやったら盛り上げられるだろう?

ひっくり返さなければいけないと思う。島国におけるネット上でのオープンさとリアル社会での締め付けは、目に見える範囲までしか自由と関心を拡大しない。最終的には国内外国人への差別と、国外の戦争参加への無関心を温存しているのだと思う。雑な書き方で申し訳ないけれど、全てはつながっている。

★こうした背景もあって出版不況・メディア不況が止まらない。それはインディメディアにも及び、あのインターネット新聞「JANJAN」が休刊になった。
http://www.janjannews.jp/archives/2744447.html
けれど、こうした動きも始まっている。「第二言論サミット」への呼び掛け。5月23日、青山ウィメンズプラザでイベント。
http://kusanomi.cocolog-nifty.com/blog/2010/01/post-0420.html  発言者:http://kusanomi.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/5-b34d.html
・「DAYSJAPAN」存続キャンペーンの盛り上がりは、差別と無関心を越えるメディアが無くなることへの危機感の表れだと思える。https://sv62.wadax.ne.jp/~daysjapan-net/kikaku/days-koudoku.html
・新宿のミニコミ&対抗書籍専門店・「模索舎」は、存亡の危機になっている。でもこうした知識・情報・人との出会いの「場」がなくなったら文化は終わりだよ。そして運動にも大きなダメージですよね。僕も関わっている。3月22日、大久保地域センターで40周年&再建イベント。http://www.mosakusha.com/mosakusha40/

ぼくらの苦しい現場に基づいて表現すること。見えなくさせられた国内/海外での加害のシステムをぼくらの日常へつなげること。そこにメディアが意義を持って生き残っていく道があると思うし、僕がやっていきたいことだ。


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フリーター労組の生存ハンドブック』で、僕は以下のあとがきを書いた。今読めば自分にはこんな大言壮語できる資格がないなと思うけど、この本でみんなが書いていた思いは切実だと思う。

http://d.hatena.ne.jp/spiders_nest/20090704/1246648216

あとがき 世界や未来へ開かれていくことを願って

 この本はとても多彩な内容になったと思う。労働で困った時、ひとりでは生きていけなくなった時、つながりたい・何かやりたいと思う時、さらに先の行動や考えを目指す時。人が生きる中でぶち当たる様々なシーンに力を与えられるものを目指した。フリーター労組は普段から、各自のやりたいことを最大限活かしてつながろうとしている。そうしてこの内容を可能にしてくれた清水さんや組合員のみなさん、全国独立系メーデーのみなさん、「NU☆MAN」はじめ各地で多彩な活動にとりくむみなさんにまず感謝したい。 

 日本社会で経済不況と格差が深刻化した1990年代以降、私たちには不安・不満や「何もできない」というあきらめの気持ちが広がってきた。自分もそうした空気の中で育ってきたし、無力感をいつも抱えていた。デモで声を上げる前に毎年3万人以上が自殺する。たまに登場するヒーローは誰もが市場経済の推進者だった。そこへ世界恐慌と派遣切りの大津波がやってきた。大企業が世界中へ進出し続ける一方で、私たちは狭い日本の中だけで閉塞させられ、未来が見えなくなっていく。

 でも同時に僕は「社会運動があるじゃないか」とずっと思っていた。小さな場作りから大きなデモまで、前向きにやれることはたくさんある。すでにここ数年間だけでもサウンドデモや労組作りなど様々なチャレンジがあったし、そこに出会った人たちは、つながれば生きていける、おかしいことには声を上げていいし、自分たち自身で新しいものを作り出せると気づきはじめた。それは世界各地でも行われている。マスコミやネットの不安を煽る情報の渦に飲み込まれ、それらは多くの人にまとめて伝えられる機会が少なかった。何も行動が起きなければ、これからも政府や大企業は私たちの生活と世界を悪化させていくだろう。 

 これは「本」でも同じだ。編集の仕事をしていたので、買う人を悩ませるほどの本が大量生産されてはすぐに店頭から消える現状をおかしいと思っていた。本全体が売れなくなる中で、一部の有名人がただ現状を大ざっぱに語るだけの本が作られ、売れていく。映画や音楽など他の表現分野でも同じことが起きている。それでは、本当の意味で人を勇気付け力を生み出すものは生まれないと思うのだ。

 本書ではそれでも意味のあるものを作りたいと話し合い、様々なシーンで誰もが自分から「使える」本を目指すことにした。もちろん、各項目で述べられたことには限りもあるので、教科書やセオリーのように読まれることは望んでいない。あとはみなさんがこれを踏み台にして新しいものを生み出して欲しい。

 また狭い意味の雇用問題を超えて未来への希望が見れる内容にしようとした。「つながる、変える、世界をつくる」という副題にもその思いが込められているし、紹介した数々の実践の多様さ・自由さがそれを物語っているのではないかと思う。

 その目的を完全に理解して「ハンドブック」というタイトルをつけ、この多彩な原稿に適切なアドバイスをし続けてくださった大月書店編集部の岩下結さんと、私たちをよく知り、深い意味を込めたイラストとデザインをくださったフリーターユニオンふくおかのいのうえしんぢさんにも感謝したい。みんなで一つの本を作るのはとても楽しい体験であり、読者の方に少しでも有意義な本になっていたらこれ以上ない喜びだ。 

 もちろん生きていればうまくいかないことはたくさんある。たがどんなにつらい状況に置かれた人でも、人とつながれば自分の人生を自分で決めていくことができる。どうか本書をバックの中に入れて、いつでも使いこなして欲しい。そして周りの人と一緒に読みながら、自分たちのアクションを話し合って欲しい。

 フリーター労組や本書に書かれたアクションに参加したい、自分もやりたいと思ってくれたら、いつでも気軽に連絡をしてほしい。協力できることはたくさんあるし、どこにでも行きたいと思っている。貧困も差別も戦争も無い世界を目指していこう。そうして誰もが未来へ開かれていくことを願って!

2009年6月 園良太