越年越冬に、10年前を思い出して――「現実的に何ができるのか」だけではなく、「自分は本当はどんな世界を望むのか」からやり直そう。

安倍独裁政権が続き、「何をしても無駄だ」という諦めと、人と人との分断が進んでいる。だけど「世の中は動く時は動く」と思い出しておきたいことがある。今のフランスだけではない。10年前の日本だ。

昨日と今日、各地の越年越冬炊き出しに参加して、何度も2008年の年末年始を思い出した。リーマンショック後の反貧困運動のピーク、日比谷公園の「年越し派遣村」だ。株が大暴落する今も、状況は実は同じ、大不況の始まりだ。

反貧困/フリーター運動が2006年後半から盛り上がり、リーマンショックで大量の派遣切りが予想された。富豪ぶりを見せびらかす首相麻生太郎には何もできない感が高まっていた。

そんな中、運動は、失業者を守るべき厚生労働省の目の前・日比谷公園に、テントを建てる計画を急速に進めた。労働組合などが山谷に学びながら、炊き出しも始めた。
08年の12月30日に派遣村は始まった。31日は最大限人々が集まった。その具体的様子はhttp://d.hatena.ne.jp/Ryota1981/20090103/1236067729
(山谷は当事者を含めた共同炊事・共同闘争だが、派遣村は当事者を支援の対象にしかしていないという批判もあった。)

そして紅白歌合戦の合間のNHKニュースで実況中継された(年末はニュースが少ないから。半ば主催者が狙った)。それでヤフーのトップニュースに出て、アクセス集中でブログがパンクしたほどに。
年明けて、寝ずに六本木のテレビ朝日へ行った。元日夜中恒例の「朝まで生テレビ」は反貧困特集。何と湯浅誠雨宮処凛首都圏青年ユニオンフリーター労組が出演した。僕は客席に参加した。客席が映された時、友人がお腹に仕込んでいた「ギリシャ暴動に続け!」という横断幕を出したから一緒に持った。全国放送でだよ。

世の中は動くときは動くのだ。

1月2日。「いつまで寒空の中外にいさせるんだ」世論の批判に耐えられなくなった政府は、ついに厚労省の1階の大講堂を開放した。野宿者・失業者・支援者数百人が、布団を持って大講堂へなだれ込み、占拠した。興奮して友人と話し合ったのをよく覚えている。
マスコミの報道 http://www.asahi.com/special/08016/TKY200901020056.html

1月4日。全ての野党が日比谷公園に集まり、座り込む群集を前に貧困対策を誓った。議員に拍手し真っ先に喋らせる今の国会前集会とは違う。「お前らちゃんとやんのかよ!」と野宿者が罵声を飛ばし、議員が「はい、やります!」と答える。本来あるべき姿ーー「大衆団交」だった。

世の中は動くときは動くのだ。

その後。派遣村は当初の予定通り1/5で撤収した。国が動きそうだし、滅茶苦茶大変でもあったから。
だが僕らはテントを残すべきだと思ったり、言った。これで「国の貧困対策」はできるかもしれないが、
・東京ど真ん中に自律的コミュニティを作ることこそが社会を根底から変える
・日比谷占拠のような直接圧力があり続けなければ、国はまた態度を変える
という思いからだ。

とにもかくにも麻生の支持率は下がり続け、8月衆院選で惨敗、民主党政権交代。反貧困運動はその原動力となったのだった。
だが次第に民主党も悪政を強め、3.11原発事故で批判が爆発。社会を根底からは変えられなかったため、自民党・安倍が再び政権につく悪夢が始まったのだった。

2019年1月1日。今も大阪、東京、全国で炊き出しとテント闘争がある。色々大変だが、やはりテントがある運動は本当に強いなと思う。社会から問題が見える。人と人が繋がれる。そこにいるんだという気迫が伝わる。辺野古もそうじゃないか。

今年は春から選挙、天皇代替わり、大阪G20改憲国会が立て続く。安倍は絶対に改憲するために、3つの計画を練っているという。

・夏の参院選衆院選との同時選挙にし、G20で「北方領土返還の成果を取った」と喧伝して勝利する。それで参院も3分の2議席を取り、秋に悠々改憲発議。
参院選の前に、天皇代替わり〜改憲国民投票までナショナリズム全開で一気にやってしまう
参院選衆院選改憲国民投票を全部同時にやる。

マジで何でもありだ。全てはつながっている。天皇代替わり、大阪G20改憲は全て戦争と資本主義のための、許されないものだ。だが今のところ、安倍と天皇は全ての狙いを押し通してきた。

それでも私たちは、これまで通りの集会・デモ・街宣だけを続けるのだろうか。終えたら無関心な人々にまみれて家路につくのか。「逮捕されたら大変だ」で考えや行動を止めてしまうのか。もういいだろう。
「現場」を作ろう。座り込もう。テントを張ろう。もっと人の多いコースでデモをしよう。場所はある。勝ち取るものだ。10年前のように。今目の前の越年越冬のように。

これはもう一つの大問題、3.11原発事故も同じ。健康被害が急増している。避難が必要だ。でも支援が無くて動けない。避難者もバラバラで生活苦だ。なら固まるんだよ。みんなで移動し、場所を空けさせるんだよ。今の西日本の公園、役所、企業。ガラガラじゃないか。
3.11直後のさいたまスーパーアリーナ新宿駅・東京駅、都庁、避難者団地のように、そこを避難希望者で埋め尽くすんだよ。生活で困り孤立する人々もそこになだれ込むんだよ。

土地は誰かのもの、まして権力者や金持ちのものでは決してない。苦しむみんなのものだ。

「○○さんを当選させよう!」だけに埋もれずに、そうした想像力をよみがえらせ、行動すること(両立させること)が、今年一番必要なことだと思います。「現実的に何ができるのか」だけではなく、「自分は本当はどんな世界を望むのか」からやり直そう(この言葉は人からの引用)。
この、厚労省講堂を埋めた1枚目の写真のように。