小泉発言も中川辞任も、自衛隊のソマリア派兵を隠すため?

海上自衛隊ソマリア派兵があっさりと決まっています。来週「海上警備行動」が発令、3月14日に最初に派兵されると出ていました。
海自艦ソマリアへ 出港は「14日」
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/090303/plc0903030152001-n1.htm

武器使用基準の緩和が一番の目的で、一般の感覚からすれば「いつのまに」、そして憲法破壊・改憲へのつながりと、自衛隊の海外派兵もついにここまで来たかという思いです。そして自衛隊内部でも相当色んな問題、ストレス、うつや自殺も増えるでしょう。

安部の時代も、安部がわかりやすくキャラ批判される裏側で、わかりにくい「教育基本法」や「国民投票法案」の「改悪」を果たしてから辞任したけれど、麻生も、このソマリア派兵を達成したから一気に「麻生降ろし」が高まったのか、という気さえします。小泉の郵政批判や、中川の泥酔い会見は、あくまでマスコミむけの隠れ蓑で。

この「何も起こらなさ」があまりにひどいと感じるので、3月8日ないかくだとうデモでは「9条改憲阻止の会」がソマリア派兵反対のアピールをデモでするというし、街頭宣伝など何かやらないとなぁ・・と思ってるよ。

2009/03/05 ソマリア沖への自衛隊派兵に反対する3・5院内集会〜
ソマリア沖への自衛隊派兵に反対する3・5院内集会〜
 ソマリア沖に自衛隊を派兵するな! ソマリア『海賊』新法と派兵恒久法はいらない!

日時:3月5日(木)14:00〜16:00
会場:参議院議員会館第2、第3会議室(地下鉄永田町下車、議員会館のロビーで入場券を配布します)
お話:半田滋(東京新聞編集委員)、各党国会議員、など。 参加費:無料
主催:2009年5・3憲法集会実行委員会

==========================

あと、「世界」記事からのこの問題の解説がメーリングリストに流れてたので転送します。

続・ソマリア沖海賊と自衛隊の派遣について

                                                                                    • -


今日2月28日に、国富さんのお知らせで、集会に行ってきました。
そこでアフリカ協議会の稲葉雅紀氏の話が興味深かったので紹介します。

1,ソマリアの一帯は、アフリカには珍しく殆どがソマリア人で構成されている。どちらかというとアラブの影響の強いところ。
2,かつて、欧米列強のイギリスとイタリアによる植民地分割によって国土を刻まれた。
3,その後、冷戦時にアメリカとソ連が背後でエチオピアを巻き込んで操った。
4,80年代後半のグローバル化の過程で、欧米が介入して構造調整を押し付け産業の民営化
 をして国家の基盤を崩し、その流れの中で国家まで潰した。
5,その過程で、イギリスの植民地だったところに「ソマリランド共和国」が樹立され、イタリア植民地だったところの角に当たるところに「プントランド国」がつくられ、ここが現在海賊の拠点となった。
6,最近辞任をさせられたユスフ大統領はプントランド暫定政府の大統領だったが、この大統領たちが「海賊」を組織化した。海賊の実働部隊は漁民が主だが、武装勢力や官僚たちも加わっている。
7,海賊が増加した背景には、欧州が産業廃棄物をソマリア沖に投棄した。それがインドネシアの大規模津波によって、汚染物質が海岸や陸上まで流れ着いて住民に疾病をおこさせている。また、諸外国の漁船が沖合で魚を乱獲し、沿岸漁業を10分の1までに激減させた。このことが、漁民をして食えなくさせおり、海賊で生計を立てざるを得なくしている。
8,04年から06年にかけてイスラム勢力の「イスラム法廷会議」が勢力をのばして国家を統一するように見えたが、米政府はこのイスラム法廷会議の中に「アルカイダ」などのテロ分子が入り込んでいるとして、エチオピアに武器などを提供して、「イスラム法廷会議」の支配を潰した。このことが、ソマリアを再び無政府状態にした。
9,06年から現在は、エチオピアが南部を支配し、それを米軍が対テロ戦争の一環として、関与している。しかし、米国とエチオピアの関与によって、「イスラム法廷会議」の穏健派は散ってしまい、現在は過激なイスラム主義を唱える者たちが「アル・シャバーブ」と名乗って主に南部でゲリラ戦をしている。
10,結局、米国の歪んだ対テロ戦争の行使が、ソマリア無政府状態にしてしまっているのだ。
11,最近、エチオピアは撤退を表明し、「イスラム法廷会議は」「イスラム法廷連合」と名称を変え、その系統のシェイク・アハメドがユスフの後任として暫定政府大統領に就いている。
この「連合」と過激な勢力が一体化すれば、ソマリアに統一政府が成立するかも知れない。
12,要するに、ソマリア沖海賊問題は、陸上の政治的安定が重要なカギなのであって、海上の海賊だけを追いつめても解決しないだろう。なにしろ、海賊をつくり出したのは欧米列強なのだから、それに銃口を向けるマッチポンプのようなことは止めるべきである。
13,自衛隊派遣はやめさせるべきだが、それへの対処方法はいくつかある。
  1)平和憲法護憲派の立場から自衛隊派遣を止めるべきとの主張。
  2)海賊には警察力を使うべきであるとの法治国家としての原則論。
  3)既にNATO連合艦隊を派遣しているのだから、それに付け加えるのは無意味であるとの立場。
  4)ソマリア状態をつくり出したのは国際社会なのだから、つくり出した相手に銃口を向けるのは誤りである。この市民の倫理的立場からの主張。
14,ソマリアと如何に連帯が可能なのかを思考して、戦略と行動手段を考えていかなければならない。

                                                                                                                                                                          • -

なお、「世界」3月号に、ソマリア海賊について3氏論考を寄稿しているので、その要点を紹介します。
*******************

1,前田哲男氏---「海賊対策にはソフト・パワーを」
  1)東南アジアの海賊は一掃された。これは沿岸諸国の警察力増強などソフト・パワー面での
   日本の協力による。
  2)この前例に倣って、ソマリア沖の海賊に対処すべきである。
  3)先ず自衛隊の派遣ありきで対処するのはおかしい。
  4)海自の「特別警備隊」が同行し、武器使用基準を「先制攻撃」「撃沈・殲滅」は実質的な「交戦権」である。日本は憲法に違反するようなことをすべきではない。
  5)他国との軍隊と共同すれば、「集団的自衛権行使容認」となる。これも憲法違反である。
  6)自衛隊法第82条は、「領海侵犯」など国土主権の侵害防止が地理的前提である。
  7)海自派遣は、中国海軍が派遣することへの対抗措置のようだ。
  8)防衛省の「普通の海軍活動」をしたいとの意欲の発露か。
  9)ひとまず海上警備行動に派遣した後に、法律を制定するというのは文民統制に反する。
 10)現時点で、日本が早急に派遣しなければならない状況にはない。だとすれば、長期的視野に立ってソマリアの問題に取り組むべきだろう。
 11)海上保安庁は、JICAと共同でアジア各国の海上法執行機関を日本に招き「海上犯罪取締研修」を実施しており、イエメンとオマーンの沿岸警備員も参加している。このように非軍事・非集団自衛権による海上保安庁による協力が機能している。
 12)このアジアモデルを世界に示して、「海賊対策モデル」で貢献すべきである。
-----------------------------------------------------

2,竹田いさみ---「ソマリア海賊の深層に迫る」
  1)ソマリア沖の海賊は、こそ泥型のアジアの海賊とは異なる「21世紀型の海賊」である。
  2)08年には111件、罪には興味を示さず、身代金の獲得だけ目的とし、総額1億2000
   万ドルを獲得している。
  3)ソマリア海賊に、イエメン海賊も合流して海賊連合が結成されつつある。
  4)海賊の正体は漁民ではなく、プロの犯罪集団である。
  5)もともと、ソマリアには産業としての漁業は存在しなかった。
  6)ソマリア沖海賊は、母船を使い、GPSと衛星電話を標準装備している。
   航海士などの専門知識がなければGPSなど使えない。
  7)ソマリア沖海賊は組織化されており、世界で前例がない。
  8)なぜこのような高度な海賊行為のノウハウを彼らが獲得したのか。
   これには英国の民間保障コンサルタント「ハート・セキュリティ」が関与している。
  9)「ハート・セキュリティ」社が、海賊対策と海賊被害補償の護衛や警備の保障を業務として
   売り出したことと密接な関係がある。
 10)「ハート・セキュリティ」社は、ソマリアプントランド・ユスフ暫定政権大統領と、コースト・ガード・沿岸警備隊の創設の請け負い契約を結んだ。そして、プントランド自治政府の「ミニ海軍」や「沿岸警備隊」の創設を手がけた。
 11)「ハート・セキュリティ」社は、ソマリア人70人ほどに「沿岸警備」、「港湾警備」、「漁業権益の保護」などの3分野について、徹底的に訓練した。
 12)訓練を受けたソマリア人を使って、プントランド自治政府のユスフ大統領が手がけたのは、密漁取締だった。自治政府はこの密漁取締で、中国、台湾、ロシアのトロール船から莫大な罰金を獲得した。
 13)ところが、密漁取締による罰金の分配をめぐって、プントランド自治政府とハート・セキュリティ社との間で対立が起こった。プントランド自治政府が契約金を払わないばかりか、罰金の分配もしなかった。一方でハート・セキュリティ社は自社が確保した罰金をプントランド政府に渡さないということが頻発した。
 14)この対立が解消できないために、ハート・セキュリティ社はプントランド自治政府との契約から手を引いて撤退した。
 15)ハート・セキュリティ社が撤退した後で、海賊が横行するようになった。ハート・セキュリティ社のノウハウを獲得したプントランド自治政府は、この海賊を認可ないし支持している可能性が高い。
 16)ソマリア沖海賊は活動領域を広げ、国際犯罪シンジケートと提携している可能性がある。アフガニスタンの麻薬貿易、およびパキスタンの武器密輸貿易との連携である。
 17)現在、このソマリア沖海賊に対策として、国連安保理武力行使容認決議までして、米・英・仏、デンマーク、中国、インド、マレーシアなどが軍艦艇を派遣している。日本も自衛隊を派遣する前提で対策を検討している。
 18)しかし、現在の諸国の対応は緊急措置や対症療法にすぎない。対症療法で海賊船を撃沈しても海賊行為はなくならない。
 19)効果的な対策は、イエメン、オマーンケニアなど沿岸諸国の沿岸警備隊、コースト・ガードを育成し、忍耐強く対処していくしかない。
 20)日本は海上保安庁という優秀な「海の警察官」を保有している。この組織を活用し、気長に海賊を封じ込めることである。JICAと連携して沿岸諸国のコースト・ガードを育成・訓練することが重要であり、既に東南アジアでの経験を持っている。
 21)日本らしい平和貢献を望むことは可能であり、千載一遇のチャンスでもある。
------------------------------------------------

3,谷口長世---「狙いはアフリカのエネルギー資源確保だ」
  1)NATOは数年前からソマリア沖対策を推進しており、イエメン政府とも協議を重ねている。
  2)米軍は、ジブチに「不朽の自由作戦」として、第5艦隊所属の合同任務部隊150・CTF150を01年に設置している。日本は準加盟国として「インド洋上の給油」をしている。米軍は09年1月に、新にバーレーンソマリア海賊対策専門の合同任務部隊151・CTF151を設置した。この組織は多国籍部隊で、フランスは入っているが米国主体である。
  3)米国は米軍再編に伴い、アフリカに「アフリカ総司令部・AFRICOM」を設置した。これはエジプト以外のアフリカ全域をカバーする。ソマリアも管轄下である。
  4)米軍の「アフリカ総司令部」の役割は、アフリカのエネルギー資源の確保にある。既に米国は、アフリカ諸国から原油輸入量の18%を確保している。これを25%に増加させる予定である。これは中東からの輸入量を超える。
  5)米国およびNATOのアフリカへの関与強化の背景には、中国の強引ともいえるアフリカ進出があり、これに対する巻き返しの意味がある。
  6)フランスは、かつての権益を確保したいという意向を強く持っており、この点で米国と対立するが、中国との関係では米国と共同歩調を取っている。
  7)NATOおよびEUは、ソマリアの平和情勢、治安対策、復興開発に非公式ながら関与して
いる。
  8)EUは、海賊問題の根本的解決は海上行動にはなく、ソマリア社会の復興と安定にある、と認識しており、そのような発言もしている。すなわち、NATOおよびEUの海上活動は、海賊対策の形を取っているが、本質はアフリカ資源の確保のためのプレゼンスである。
  9)EUは、日本の海自艦派遣について、積極的な要請はしていない。それは、ソマリア沖海賊対策といいながら、背後の目的がアフリカ資源の確保ないし支配にあるから、日本に入り込まれると面倒になるとの思惑があるようだ。
 10)日本は、米・EU・中国とは異なる、日本ならではのアフリカ政策に基づく外交・安保を展開するべきだろう。