★年末年始の渋谷宮下公園排除から神宮通公園へ――希望は炊き出し、スクウォット、ゼネラルストライキ★

「自分が回った東京のどことも違うし、人間がロボットじゃない。ここには希望がある。」
(神宮通公園の炊き出しに来たイギリス人のドキュメンタリスト)

★各種の報告★ 現地ツイッターhttps://twitter.com/611shibuya 三宅勝久さんhttp://ameblo.jp/loansharks/
田中龍作さんhttp://tanakaryusaku.jp/2014/01/0008527 東京新聞pic.twitter.com/bqKDBdz0dO


1:労働時間に縛られた日本の運動の限界

しぶや。シブヤ。渋谷。モノと情報と使い捨て労働があふれる街。東京で生まれ育った僕にとって、10代の頃からそれらにまみれながら、20歳で初めてデモに参加した街。「2020年東京オリンピックへの玄関口」を自称して一大再開発へ突進する街。この年末年始の渋谷・宮下公園強制排除とその後の展開は、私たちの未来を示していました。それは何か。

2013年12月に「特定秘密保護法」が可決されました。秋の臨時国会はそれ以外もあらゆる悪法が成立しました。国会前に集まる人数も熱気も加速し、デモや抗議行動が続きました。僕も毎日のように声を上げましたが、最後には決められてしまいました。いっぽう、隣の韓国も政党や労働組合への解散命令等に怒った民衆が「朴槿恵政権打倒」に立ち上がりました。
★「朴槿恵退陣」光化門広場を占拠
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/strike/2013winter/1388231686109Staff

その運動手法には、大きな違いが二つあります。一つは日本は特定の法律反対にとどまったが、 韓国は政権打倒を正面から掲げたことです。これは安倍政権が夏の参院選までは経済政策をメインに掲げ続けたことが大きいでしょう。また市民運動の側に政権打倒を正面から掲げる習慣がなかった。今後の課題で、別に考えていきたいです(そして日本が韓国・朝鮮への侵略と植民地支配の責任を取らない最悪の国家だ、という関係性の直視は欠かせません)。

もう一つは、日本はデモも抗議行動も夜の数時間だけですが、韓国はみんなが昼間の職場労働をストップさせるゼネラルストライキを行ったことです。
★怒った労働者民衆10万、「ゼネスト」都心集結
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/strike/2013winter/1388229402982Staff

生産を止めれば経営者や国家権力者に大ダメージとなり、要求を通せます。資本主義の根幹を揺るがし、社会を根底から変えていくことができます。そして1人ひとりが運動に使える時間が飛躍的に増えます。対抗運動の究極です。これができるのは労働組合も含めて、社会が資本主義にどこまで支配されているかの違いです。

では私たちはどのように資本主義に支配されているのでしょうか。日本の抗議行動が夜18時〜21時くらいが多いのは、言うまでもなく多くの人は昼間と翌日に仕事があるからです。仕事=日常に戻ることを前提に運動をつくるため、長時間居座る広場占拠やテントの設置、逮捕覚悟の思い切った行動、そしてストライキができません。仕事=日常に戻る人が多いはずだ、という事を前提に運動をつくる事の限界です。僕を含めて誰もそこから自由じゃないので、つくる側の努力や覚悟が足りないと言いたいのではありません。私たちの限界を明らかにし、具体的にどう乗り越えるか考えたいと思います。


2:都市から内面まで全てが資本主義に支配された社会

戦後日本は家庭・学校・地域の全てが「良い会社に入り死ぬまで働く」事を前提に作られ統制されてきました。90年代以降に不況と経済格差が激化し、いまや私たちの労働環境は最悪です。その時に経済も思考も変わらなければいけなかたのに、実際は「働かなければ死ね」という脅しがますます強化されました(学生の就職活動が典型)。一方作り出されたモノ・情報・サービスは買わせなければいけないため、どれほど政治の暴走や原発事故が起きても消費の情報で社会を埋め尽くさなければなりません。資本主義の極限、競争社会・自己責任・過剰消費の新自由主義です。

そこでは私たちはまずバラバラにされた上で、労働と消費に専念させられます。職場では心も体も酷使させられる。非正規雇用の多くは毎日職場も違うし、バイト仲間どうしの連絡先交換すら禁じられ、問題が起きた時の連帯ができません。溜まった疲れは消費に向かうしかない。コンビニとファーストフードと空き時間をつぶすスマホ類だけは揃っているため、モノや食事を自分たちで作る、人と話し合う必要性が出てきません。街も電車内も消費情報しかなく、世の中の情報は中国・韓国・朝鮮への憎悪を煽るものばかりです。

この結果、まず野宿生活者も、ネカフェやマックを点々とする人も、非正規労働者も激増しました。しかしその姿と理由はメディアや社会から隠され続け、自分で自分の状態や問題を把握することもできなくさせられました。原発問題や秘密保護法が隠されることも同じです。労働組合も80年代の総評解体以降に特に弱体化され続けたため、動きも鈍いです。政治的なビラを貼れば軽犯罪法違反で簡単に逮捕されたりします。<嘘と暴力の社会>。こうした都市の代表格が渋谷や新宿です。

それゆえ日本の運動は、「労働でカツカツな市民」が「知らせること」と「抗議」の両方を担わなければいけないという状況です。政治家も官僚も行政も仕事で悪事をしており、私たちより圧倒的に使える時間も力量も多い。これを変えるには、私たちと労働組合や様々な団体が手を携えて広場の占拠、職場占拠、ストライキへ踏み出していくしかないと思うのです。


3:殺人、弾圧、国家主義で囲い込む

東京オリンピックを決めた国と東京都は、社会の全てを資本主義の<嘘と暴力>で埋め尽くす事に決めました。渋谷区がその先頭を走っているから、昨年末に宮下公園を強制排除しました。年末年始に行政が閉まるから民間が炊き出ししているのに、行政自身が年末に炊き出しごと野宿者を強制排除し、真冬の路上に放り出す。しかも宮下、美竹公園、区役所の地下駐車場と全ての場所から追い出そうとする。これは<殺人>以外の何物でもありません。資本主義とオリンピックにより、企業も行政も直接的に人を殺し始めたのです。

そして警視庁は大晦日に渋谷駅前のスクランブル交差点を完全封鎖しました。交差点に行く道を通行止めし、駅の出入り口を塞ぎ、駅内も街も警察官と警察車両が埋め尽くしました。僕はそれに抗議したら警察が無線で増員し、「おい園!」と追われそうになりました。カウントダウン騒ぎという若者たちの路上開放体験を封じ込め、五輪に向けた民衆弾圧の訓練もしたのです。法的根拠も緊急の理由も何もなく人の制限を封鎖したのは前代未聞であり、これを絶対に許してはいけません。そして渋谷も他の街も12月から平日も日の丸を街中に掲示し始めました。都知事選には元自衛隊の田母神が出馬し、話題をさらっています。矛盾の全てをナショナリズムと軍事統制で覆い隠すつもりです。


4:全てを逆転させる炊き出し、スクウォット、ゼネストを★

しかし、渋谷区の強制排除は明らかに裏目に出たし、運動の力で状況を逆転させました。渋谷の越年越冬実行委員会が宮下公園に再びテントを立てた事で、野宿者運動の力と区とナイキが公園を独占する方がおかしい事を明らかにしました。<ビデオジャーナリストユニオン>が排除を生中継したことで、行政は暴力を振るうことが多くの人に知れ渡りました。道路に面した隣の神宮通公園に移った事で、圧倒的多数の若者たちが炊き出しを始めて目にしました。そして話しかけ、参加してくる多くの人達がいました。立て看板には各地の越年越冬や運動のチラシが貼られまくり、若者たちが見たことのない情報を見ることができました。

そして公園内では食事も、話し合いも、参加者みんなでイチからやっていくことができました。個別バラバラに消費するのでなく、みんなで食事を作り、食べ、片付けました。上司の命令で自分の行動や評価が決まるのではなく、今日はどうするかをみんなで話し合ってみんなで決めました。場をスクウォットし、炊き出しやテント宿泊をすることで、運動が生になり、生が運動になります。時間を始めとした様々な制約がなくなり、できることは無限に広がるのです。
これらの様子はぜひ現地ツイッターの写真を見てください。https://twitter.com/611shibuya

今年の私たちは、こうした運動を目指しましょう。そしてゼネラルストライキを起こしましょう。運動に関る人と運動体の連携が増えれば、越年越冬のような取り組みを正月以降も続けることができるのです。ともに!

(以下は全て現地ツイッターからの写真)
★渋谷・宮下公園からの深夜の排除

★隣の神宮通公園で再開した炊き出し

★数多くの差し入れ

★多彩な立て看板。通行人が立ち止まり読んでいく

★何でも寄り合いで全員で話し合って決める。ランプの下で

★大晦日紅白歌合戦をプロジェクターで中継して見る

★正月にみんなでもちつき

★「さすらい姉妹」の路上演劇。注目度抜群!

★生活・健康などの「よろず相談」の様子

★宮下排除の映像を路上の人にテレビで流し続けた

★多くの人が立ち寄った

★ついに大テントが立ち、受付も盛り上がる