「2.9竪川弾圧」の報告と、保釈後4ヶ月の思考と行動(文&経産省前アピール)


(10月19日の経産省前のアピール)


ニーナ・シモン Nina Simone - Ain't Got No___I've Got Life(日本語字幕入り)、10月21日「街頭行動の自由を考える」集会@一橋大学で流され、感動した。♪わたしには家がない 靴もない 金もなければ 品もない……じゃあ、私には何があるの? 私はなんで生きてるの? 誰も私から奪えないものって何?……命がある 私には自由がある 心がある 私は生きている!

(この文は「麻生国賠」のニュースレター「でてこい!」第12号に書きました、もし購読頂ける方はぜひ麻生国賠事務局へご連絡ください!http://state-compensation.freeter-union.org/

保釈後の変化と現在の自分

2月9日、江東区の竪川河川敷公園での野宿者強制排除に抗議して「器物損壊」で不当逮捕されました。2月末に「威力業務妨害」に切り替えられて起訴され、4ヶ月以上東京拘置所に監禁され、3度の裁判を経て6月14日に保釈を勝ち取りました。皆様本当にありがとうございました!当初は陽の光に慣れてないのでめちゃくちゃ眩しく、肌が真っ白。迎えに来てくれた2人の仲間と大きな荷物を持ちながら小菅駅へ向かい、帰宅し、その日は疲れ果てて眠りました。

4ヶ月半もの間4畳半の密室に閉じ込められ、誰とも話せず、全く動けなかったため、体力・気力ともに低下し、今でも忙しさとストレスに弱いです。まただんだん暖かくなる時期に外気に触れていなかったため、今年はいきなりの夏の暑さが例年以上にキツかったです。また、無意味な家宅捜索や身辺調査により、家族や身近な人々にも多大な負担を与えるのが日本の弾圧の特徴です。実家にも定期的に張り付いて、家に戻っているかどうかを監視している可能性があります。明らかな人権侵害でしょう。つまり行動を制限された上に警察に日常を監視され続けています。体力的にも精神的にも以前の自分には簡単に戻れなくさせられてしまったのです。

 そこでまず、大きな負担をかけてきた家族や身近な人とまずゆっくり話すようにしながら、部屋を片付けたり仕事を始めたりして生活を再建しています。東京は忙しすぎます。社会運動もしんどい事です。それらが身体化されていた自分の動き方にかなり無理があったと痛感しました。そこで早寝早起きする、毎日同じ時間に三色食べる、寝る前と起きた後にストレッチする、携帯電話やPCメールをあまりやらない、人の話をまずゆっくり聞き、一人一人とじっくり話す、作業がうまくできなくても焦らない、週に一度は公園とか自然の中に行く、などです。また狙われている事を自覚して警察の前面にはあまり出ない注意をし、細かい怒りは抑えるようにしています。そしてガラス蹴りは野宿者「支援」の立場を飛び越えた行為だった面があるため、それは無いようにしようと思っています。

 こうした結果、だいぶ生活リズムを取り戻し、運動へ復帰するようになりました。それでも公安の目線が今まで以上に気になる。運動現場で公安が保釈期間こそ再弾圧を手ぐすね引いて狙っていると思います。自分が参加するとツイッターに書いたどの街頭行動にも白髪で角刈りの公安などお馴染みのメンツが現れるため、非常に行動を制限されます。連中が起こした過去の不当逮捕や人権侵害を必ず裁く意味でも裁判に勝ちます。


不当逮捕と獄中の問題点●

 自分の先日経験した江東区役所での強制排除は、自治体・警察・警備会社が強固に連携しながら行っているのが特徴でした。「自治体の民間企業化」が進んでいます。再開発を最優先し、非正規職員を増やすことで、利益至上主義に職員をひたすら従わせている。そして強制排除の暴力のノウハウを最も持っているのは警察であるため、区役所職員は強制排除の方法をそこから学び、警察は権限拡大と天下り先確保に使っています。そして警備会社も商機にしています。こうして現場には3者の連合体が大挙して押し寄せ、警備会社とともに職員が警察顔負けの挑発や強制排除を行うのです。スカイツリーのお膝元で、隅田・荒川から執拗に野宿の仲間を追い出そうとする墨田区や、「ナイキ公園」に続き「渋谷ヒカリエ」の再開発と美竹公園からの追い出しに突進する渋谷区も同じです。江東区職員は検察の調べにも易易と応じてでっち上げ起訴に加担してしまっています。このような「自治体の警察化」の実態を広く区民・都民に知らせて変えましょう。また大阪・釜ヶ崎の選挙権剥奪抗議への弾圧も全く同じであり、全国で問題化していきましょう。

 今回は原宿署の初日から「保護房」にぶち込まれました。布団と枕での睡眠・歯磨き・入浴・読書・執筆といった通常房では出来る事が一切できない。食事は屈辱的な手づかみ、蛍光灯が一晩中明るく寝られない、時計も人の気配も一切なく社会感覚を奪われます。暴行は跡が残り問題化しやすいため、内面から破壊していく、巧妙な「殺人房」なのです。これはもともと拘置所に存在し、僕も東拘で1日入れられました。しかし警察権力の強大化で不当逮捕が増え、当然本人は反発します。その際きちんと話をきかずに叩き込んで大人しくさせるために、都内の全ての留置所に保護房を建設しているのです。特に原宿署・湾岸署は大規模留置所であり、保護房虐待もひどい。この保護房と大規模留置所を解体していく事が必要です。

 そして何といっても長期勾留と保釈条件。最初の留置所から警察・検察・裁判所が一体化して最大23日も監禁し、さらに起訴さえすれば拘置所に何ヶ月でも閉じ込められる現在の制度は絶対に変えなければなりません。警察・検察が勾留理由に必ず使う「逃亡の恐れ」はリスクが高すぎてありえない。「証拠隠滅の恐れ」は、弾圧の多くは現行犯だから証拠は当日の現場にしかないため成り立たない。しかし裁判所が警察・検察の方を信じきっているため、延々と延長されるのは獄中にいると心底許せません。   

 それでも保釈が認められ、保釈金を払えば外に出られます。しかし何と200万円もかかってしまった!集めてくれた救援会に申し訳なく思うとともに、そんな金払える訳がない多くの人が監獄にとらわれ続けている事を思うと怒りがわきます。さらに「保釈条件」がついており、破れば何と保釈取り消しで東拘へ逆戻り、保釈金が没収されます。1:実家に住め。2:江東区役所、竪川河川敷公園に立ち入りするな。3:二泊三日以上の外泊は裁判所の許可を取れ。これらも勾留延長と同じ理由からであり、さらに僕が職員を脅さないようにという配慮です。暴力を振るったのは江東区なのに逆転させているのです。保釈条件により行動の自由が大きく縛られ、裁判闘争の竪川現地との連帯も困難にしています。三者の一体化を解体し、長期勾留を無くさせ、保釈条件を廃止させる事が必要です。


●政治・弾圧・運動のこれからに向けて

 江東区は10月10日、ついに再び行政代執行の手続きに入りました。公園内の野宿の小屋に対し「弁明機会付与通知書」を配布したのです。区が「あなたたちに不利益な処分をする可能性があるので、言い分があるなら今のうちに文書で提出しなさい」ということ。前回は住人が代執行対象場所から移動したので、今回は何と公園のほぼ全域を対象にしてきました。早ければ1ヶ月以内に代執行が強行されます。何の反省もなく凄まじい暴力を繰り返す区は絶対に許せません。必ず止めましょう。

 区はすでに竪川公園をフェンスで覆って無理やり「開園」させました。これにより少年たちが今まで以上に公園内の仲間を「違法」とみなすようになったのか、少年たちの襲撃も激化しています。マスコミと政治の生活保護バッシングがそれに拍車をかけています。しかし江東区は少年たちが投げた石を「スーパーボールだった」と嘘をつき、人権教育をやり気もありません。そして横浜では生活保護の申請窓口に警察OBを配置しようとしています。つまり雇用・社会保障の削減による貧者の激増と、警察の弾圧増加はセットで進行します。

 さらに何と自民党の政権復帰、安倍の首相就任や橋下の内閣入りが現実化しそうです。この1年、反原発運動は弾圧が少なく、反戦・反差別や党派への弾圧は変わらず多かったですが、確実に全ての分野で運動弾圧が増えると思います。4年前の私たちの「麻生邸リアリティツアー」は自民党最後の首相を守ろうとした警察に潰されました。しかし今野田や枝野の自宅や事務所前を普通に反原発デモが通れているのは、テーマの違いだけでなく、警察が民主党を守る気があまりないのもあると思います。官邸前で大規模抗議がやれているのも同じです。弾圧の少ない理由を「警察対応の心構え」に回収したり、反弾圧・救援活動を運動から切り離していたら必ず巨大なしっぺ返しを受けるでしょう。
 
すでに大飯原発再稼働阻止の参加者が3ヶ月後に不当逮捕。10月5日に関西電力前で不当逮捕。東京でも経産省前テントを潰しに来たり、霞ヶ関の直接行動や街頭デモへの規制・弾圧を強めるでしょう。そして今年7人もの死刑が執行されたように重罰化も果てしなく強まり、裁判員制度は民衆どうしの連帯ではなく民衆が民衆に死刑宣告をさせています。「新たな捜査手法」「ACTA」に代表される情報や自由を統制し相互監視を張り巡らせる悪法もこれでもかと出てきています。

そして関東は福島の隣です。原発事故の実態と被害を表面化させないため、日本政府や国際原子力ロビーは最大限の圧力を福島にかけ、住民を逃さないようにしています。除染ビジネス、避難区域解除、「復興」アピールのための運動会やビール大会の開催など、県・市町村・学校・病院が国に抑え込まれています。一方「福島県民健康調査会」で、3.11以降最大の健康被害「女子小中学生の半数以上からのう胞が発見」が発表されました。しかし何と事前に「原発事故と関係ないという共通見解にしよう」と決める「裏会議」が持たれていたのです。まさに子どもたちへの大量虐殺です。

こうして社会のあらゆる局面・あらゆる問題で情報を隠し、自由を奪い、私たちどうしを争わせながら、自民は純粋極右政党化を強めています。中国・朝鮮・韓国への排外主義と戦争扇動が極限まで行われます。そして沖縄に基地とオスプレイを押し付け、日本全体も日常を完全に戦争体制化していくでしょう。

それは「世界の問題も自分の問題も事実に気づく必要はない。どんなに辛くても被曝しても逃げずに黙って働く事だけしていろ。少しでも反抗したらすぐに弾圧するぞ、最終的には死刑だ。お互いを相互監視しながら、不満は自分より弱い者や東アジアにだけ向けていろ、もちろん死にたくなったら勝手に死ね。」という恐るべき体制です。

 私たち一人ひとりが、どのように闘いどのように生きていくかが根本から問われます。オール沖縄で反対するオスプレイを押し付ける空前の暴挙への怒りから、沖縄の人々は状況を切り開きました。普天間基地を閉鎖に追い込もうと基地内に座り込みし、テントを建て、入口を車で封鎖して果敢な実力行動を展開しました。配備後も負けずに普天間閉鎖の行動が続いています。大飯原発の直接阻止行動も画期的でした。それに対し、中央政府のある東京は警備の厳しさや認識の甘さからまだ同じレベルのことはできていません。しかしそれが必要なのです。

 こうした現状をトータルに変えるため、今僕は防衛省と官邸へのオスプレイ・沖縄基地反対連続行動と、「ふくしま集団疎開裁判」の毎週金曜霞ヶ関行動に関わっています。竪川の強制排除にも強く反対し続けます。最も虐げられる現場と連帯し、世界を根底から変えていく点で共通しています。そこに「麻生国賠」と「竪川弾圧裁判」のたたかいを連携させていくことで、弾圧を許さずに状況をトータルに変えていきたいと思います。

(二つの裁判はともに次回が山場です。「麻生国賠」は10月29日14時〜東京地裁429号法廷で原告陳述。http://state-compensation.freeter-union.org/
「2.9竪川弾圧公判は12月4日13時半〜東京地裁429号法廷で被告人質問。http://solfeb9.wordpress.com/
傍聴席を溢れさせることが裁判官へのプレッシャーと勝利につながるので、ぜひ熱い結集をお願いします!)